今回は台湾の最年少デジタル大臣であるオードリー・タンの『自由への手紙』を紹介させていただきます。
本書を読んだきっかけ
現在私は会社でDX推進担当者として、RPAの導入と開発に携わっています。
以前両親にもそのような話をしたからか、オードリー・タンの本は読んだ方が良いとメールで連絡がきました。
どうやらニュースで紹介されていたようで、面白かったら貸してとのこと。(雑)
恥ずかしながら私もオードリー・タンについては全く知らなかったので、調べてみたところ台湾の最年少デジタル大臣であり、新型コロナウイルス対策でも台湾で多大な貢献をしていることを知りました。
書店で何冊か出版されていた本がありましたが、一番読みやすそうだった「自由への手紙」を手に取りました。
自分が携わっているIT関係だけでなく、様々なテーマについて独自の視点でとてもわかりやすく書かれており、自分用のメモとしても残しておきたいと思います。
本の概要
それでは、本書についてご紹介させていただきます。
始めに著者のプロフィールと概要についてまとめました。
著者のプロフィール
著者:オードリー・タン
出身:1981年 台湾生まれ
職業:台湾デジタル担当政務委員(大臣)
14歳:中学を自主退学
15歳:仕事をはじめる
16歳:台湾のIT企業の共同経営者となる
19歳:シリコンバレーで企業
24歳:Perl6開発に貢献、トランスジェンダーであることを公表
27歳:シリコンバレーのSocialtext社創業メンバーとなる
33歳:ビジネスの世界から引退、AppleでSiriのプロジェクトに加わる
35歳:史上最年少で政権に入閣、デジタル担当大臣に就任
コロナウイルス対策では、薬局など各販売店のマスク在庫がリアルタイムで確認できるアプリ「マスクマップ」を導入
現在も自由な発想で台湾のために尽力している
本の構成
1章:格差から自由になる
-不平等から自由になる
-不安から自由になる
-年齢から自由になる
-競争から自由になる
-国家から自由になる
-対立から自由になる
2章:ジェンダーから自由になる
-正しさから自由になる
-男と女から自由になる
-ジェンダー概念から自由になる
-家族から自由になる
3章:デフォルトから自由になる
-強制から自由になる
-ヒエラルキーから自由になる
-支配から自由になる
-言葉の壁から自由になる
4章:仕事から自由になる
-スキルセットから自由になる
-一枚岩から自由になる
-お金から自由になる
印象に残った言葉
どんなに優れたテクノロジーでも、社会になじむものでなければ機能しない
本書の中で、著者はドラえもんのかわいさはとても大切であると言っています。
ドラえもんの役割は「万能な世界にのび太を連れていくこと」ではなく、「今いるのび太の世界にのび太がうまくなじめるようにすること」であると分析されていましたが、これは今の社会にもピッタリだと思いました。
現在の私の仕事内容は、DX(デジタルトランスフォーメーション)と言って、IT技術を浸透させることで会社や生活を良いものへと変革させるとうものですが、「浸透させる」という部分が本当に難しい。。
以前までは開発者として、IT技術が有効に使えると知っている人から依頼されていたので「浸透させる」ということを意識していなかったのですが、今はITに詳しくない方にも説明して受け入れてもらわないといけません。
どんなに強力なツールだったとしても、その会社で実際に使う方々になじむものでなければ受け入れられないし、無理に導入しても効果は見込めないのだと改めて本書を読んで感じました。
欧米ではロボットといえばターミネーターのような敵をイメージしますが、日本の代表的なロボットはドラえもんのような親しみのある支援のロボットです。
ロボットに対してそのような印象を持てることも日本人の強みであるそうです。
AIやロボットからドラえもんが連想できることを強みだと思ったことはありませんでした。
やはり海外から見た日本の強みや弱みというのは違った視点があって面白いし、会社で働いていても同じことが言えて、外部の意見も聞いてみるということは大切だと思います。
学ぶことは山登りと同じで、大切なのは登る過程を楽しむこと
学びとは山登りのようなもの。誰にでもそれぞれのペースがあります。
食べる速さ、走る速さ、話す速さ、それは一人ひとり異なって当然であり、学ぶ速さについても同じ。
大切なことは、「人生を通して学ぶこと。学び続けること」
学ぶことは山登りと同じで、大切なのは登る過程を楽しむこと。
本書を読む前に著者のプロフィールにIQが高すぎて測れないと書いてあったので、これだけ頭の良い人はどんな思考をしているのだろうと想像もつきませんでした。
本書を読み進めると、全体的にとても穏やかな文章で勇気をもらえる言葉がたくさん書いてあって驚きました。
(実際にはとても話すスピードが速いそうですが、会話する人に合わせてスピードもコントロールしているそうです。)
私もIT業界で働くようになり3年目になりますが、学びに対する競争感のようなものを日々感じます。
自分より若い年代の人がとても優秀だったり、みんな理解しているところで躓いてしまったりと焦ることもありますが、楽しんで学ぶということは忘れてはいけませんね。
この章の最後に「自分が学んできたことに最大限に寄り添えるものは何かを見極めるといいでしょう。」と書いてありました。
難しい問いかけですが、普段の生活でこのように問いかけする機会も中々ないので、本を読むことって大事だなと改めて感じます。
言葉の壁から自由になる
母語の台湾語に加えて、英語・中国語・ドイツ語・フランス語を話すことができるオードリーさんが考える重要なことは、以下のように書かれていました。
・多くの言語を習得すればするほど、新しい言語を学びやすい
・言語は文化に通じていて、より多くの文化に接している人ほど新しい文化を受け入れやすくなる
・たくさんの言語ができるということは、たくさんの文化を取り入れることができる
台湾では、10年以内にバイリンガル国家となることを目標に「2030年バイリンガルカントリープロジェクト」を発足したそうです。
ここではバイリンガルとは、自分の母語に加えて英語を話せるようになることと定義されています。
バイリンガル化すると以下2つのメリットがあると言っています。
・世界中の英語を共通語としているたくさんの国々、たくさんのコミュニティとつながることができる
・台湾にやってくるさまざまな国の人々が、「台湾は居心地のいい場所だな」と感じてくれる
今はAIが発達することで、翻訳機能もかなりのスピードで正確に訳してくれます。
英語の勉強はする必要がなくなるという話も聞くことがありますが、AIの発達はたくさんの文化を取り入れるということにも大きく貢献するのでしょうか。
私は日本語がペラペラな海外の友人がいますが、翻訳機能だけではおそらくここまで仲良くなることはできなかっただろうと思うし、直接話せているからこそ楽しいと感じることはたくさんあると思います。
学ぶ過程で色々な文化を知る機会はたくさんあると思うので、AIを上手く活用しながらバイリンガルになるべく英語の勉強は頑張りたいです。
プログラミング言語が共通語でもいい
本書の中で著者は、言語について「英語を学ぶことが重要」と捉える必要はないと言っています。
これからは、プログラミング言語が英語に匹敵する共通語になるかもしれないからです。
プログラミング言語は多くの異文化と異文化を自由につなぎ、混じりあった新たな文化をつくりだしている。
コンピュータは誰かの発明と誰かの発明が掛け合わされて発達してきたという歴史があります。
国を超えた人と人との協働が、コンピュータの成り立ちなのです。
プログラミングやAIと聞くと、時代の流行のような印象を受けてしまうこともあると思いますが、その歴史を考えると決して一時的ではないものであると感じます。
「ハンコ問題」はハンコが問題ではない
第4章の「ハンコ問題」の話は個人的にとても面白かったです。
本書では「ハンコ問題」は実はハンコが問題ではなく「紙の問題」であると言っています。
紙に押印しているからウェブ上でのやりとりが難しく、テレワークなどにそぐわないという視点も必要です。
紙に代わるような「ハンコを押せるコンピュータ画面」にアップデートしたら、印鑑文化の新たな生かし方が見つかるかもしれません。
問題を考えるときは、たくさんの視座をもつといいでしょう。
この話を読んでいるとき、ちょうど 最近はまっている「宇宙兄弟」を思い出しました。
月の上でバギーがどうやったら谷に落ちないかを議論していた時に、みんなタイヤとエンジンに問題があるという前提で解決策を考えていましたが、ムッタ(主人公)は問題はフロントの見え方にあると考えて無事に問題を解決させます。
「答え」がわからない時は、実は答えではなく「問題」がわかっていないことの方が多い。
と大学時代に教授が言っていましたが、急いでいる時や焦っている時ほど早く答えを見つけたいという気持ちが先走って迷子になってしまいます。
いつも「そもそも問題は何だっけ?」と思うように心がけたいです。
SDGsの17番目にフォーカスする
最後の章で著者はSDGsについて述べています。
最近耳にする機会がとても増えましたが、さらっとおさらいしてみます。
SDGsとは(Sustainable Development Goals・持続可能な開発目標)のことで、2030年までに解決・達成すべき国際的な課題と目標のこと。
2015年に米国国連本部で開催され、150以上の国が参加した「国連持続可能な開発サミット」で採択されました。
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任 つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさを守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう
この中で、著者が一番フォーカスしているのが、17番目の「パートナーシップで目標を達成しよう」であると述べています。
この目標の下にある具体的なターゲットは以下のようなものがあります。
・信頼できるデータの入手可能性の向上
・効果的なパートナーシップの推進
・イノベーションの相互共有
それぞれの部門で働く人はデジタル的かつ持続的に、組織を利用優先ではなく目的を持ったものに変革する必要があるという内容になります。
「目的を達成するために動けば、お金があとからついてくる」というのがこの目標の趣旨であるようです。
この本は4つのChapterと17個の項目で書かれていますが、SDGsの17を意識しているのかなと感じました。
最後に
「自由」をテーマとした本書ですが、著者は「自由な人」を以下のように定義しています。
・自分が変えたいと思っていることを変えられる人
・自分が起こしたいと思っている変化を起こせる人
自由になりたいと思ったり、自由ではないと感じることがあれば、
「自分が変えたいと思っていることは何か?」
「自分が起こしたい変化は何か?」
をまず考えてみるのがいいのかと思いました。
それがはっきりとわかれば、自ずと次にするべき行動は決まってくるのかもしれません。
SDGsの17番目は「目的を達成するために動けば、自由があとからついてくる」と言い換えることもできるのではないかと感じました。
とても読みやすく色々な考え方を知ることができる本なので、気になった方はぜひ読んでみてください(^^)/
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