予備知識
大陸法
ヨーロッパ大陸を中心として採用されている成文法が中心の法律のこと。
日本は明治維新後、ドイツやフランスの法律を参考に国内の法律を整備した歴史的経緯があるため、成文法を中心とした大陸法を採用している。
英米法
英国や米国を中心として採用されている慣習法や判例法などの不文法が中心の法律。
成文法
文章になっている法律や政令、省令、条例、規則など。
日本でイメージされる「法律」は成文法となっている。
不文法
文章になっていない慣習によって成り立つ慣習法や、判例の蓄積である判例法がある。
公法
私法
人と人との約束事や関係について定めた民法や商法、会社法などのこと。
実体法
具体的な法律の内容を定めた民法や刑法などのこと。
手続法
法律の内容を実現するための手続きの方法を定めた民事訴訟法や刑事訴訟法などのこと。
問題
以下の会話は、中小企業診断士であるあなたとX株式会社の代表取締役甲氏との間で行われたものである。
現在、X社は、Y株式会社との間でY社の完全子会社であるZ株式会社の全株式の買取に向けた交渉を行なっている。
この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
※本番ではこの文章がズラッと並んでいますが、問題文を読むと頭がクラクラしてしまうので、本ブログではキャラクターを使った対話形式にしています。
※内容については本番のままです。
※左が甲氏で右があなたです!
今、わが社によるZ社株式の買取りについての契約書を読んでいるのですが、見慣れない用語が飛び交っていて正直よく分かりません。
確かに、株式譲渡契約は、売買、賃貸、請負といった、企業間の商取引とは異なる構造になっているので、慣れないと難しいですよね。
これらの契約には【A】や【B】事項といった【C】系の概念が用いられており、【D】系に属する日本にはなじみにくいところがあります。
まず、クロージングとは何でしょうか。
取引の実行のことですね。
通常、契約書を締結してから、取引を実行するまでに間隔が空くので、クロージングという概念がでてきます。
株式譲渡の場合でいうと、売主から買主への株主権の移転と買主から売主への株式譲渡代金の支払ということになります。
なるほど。【A】とはどういうことでしょうか。
株式譲渡の場合だと、契約の一方当事者が、相手方当事者に対し、株式やその株式を発行している株式会社の状況などについて、契約書締結時やクロージング時などの一定の時点において、一定の事項が真実かつ正確であることを【A】するものです。
今回の契約書ですと、Y社が御社に対して、Z社において未払い残業代がないことなどを【A】しています。
難しいですねぇ。【B】事項とは何でしょうか。
契約の一方当事者が、相手方当事者に対し、一定の行為を行う、又は行わないことを約束し、又はその義務を負うことです。
大きく分けてクロージング前のものとクロージング後のものがあります。
今回の契約書ですと、Y社がクロージングまで、Z社を適切に経営していくことなどがこれに該当します。
やっぱり、難しいですねぇ。
うまく説明できなくてすみません。
これらを理解するには【A】や【B】事項に違反した場合にどういう効果が発生するのかを考えると分かりやすいかもしれません。
まず、クロージング前に【A】違反や【B】事項違反が発覚した場合には、一方当事者が違反した当事者に対し、
①取引の実行拒否、②契約の解除及び③損害の補償請求を求めることができると契約書に定めることが多いです。
他方、クロージング後に違反が発覚した場合については、①から③までのうち、【E】のみ認められると契約書に定めることが多いです。
なるほど。ようやく理解できました。
買主である当社としては、契約締結後に取引を取りやめたい事由や契約を解除したい事由、Y社に損害を補償してもらいたいと考えるケースについてY社の【A】や【B】事項として契約書に定めておけばいいわけですね。
その通りです。
設問
設問1
会話の中の空欄A、B及びEに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
ア)A:誓約 B:表明・保証 E:②契約の解除
イ)A:誓約 B:表明・保証 E:③損害の補償請求
ウ)A:表明・保証 B:誓約 E:①取引の実行拒否
エ)A:表明・保証 B:誓約 E:③損害の補償請求
設問2
会話の中の空欄C及びDに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
イ)C:国際法 D:国内法
ウ)C:私法 D:公法
エ)C:手続法 D:実体法
正解
設問1)エ
設問2)ア
解説
設問1
説明文からAは「契約書締結時やクロージング時などの一定の時点において、一定の事項が真実かつ正確であることを【 A】するもの。」
Bは「契約の一方当事者が、相手方当事者に対し、一定の行為を行う、又は行わないことを約束し、又はその義務を負うことです。」
と説明されています。
Bの方が「約束・義務を負う」などのキーワードが入っていて、強いと考えられるため、Aには「表明・保証」Bには「誓約」が入ると考えることができます。
Eについては、
・クロージング前はまだ契約が履行されていない。
・クロージング後は契約の一部が履行されている可能性がある。
と考えることができます。
①と②はすでに契約の一部が履行されている可能性があるため、拒否や解除は難しいと考えられます。
よって③の損害の補償請求を求めるが正解だと考えられます。
設問2
「【D】系に属する日本にはなじみにくいところがあります。」
という説明から、 Dには日本が所属する系統の言葉が入ると判断できます。
予備知識があれば「大陸法」であることがわかります。
ひとこと
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